来週末の3月12日、今年のアカデミー賞授賞式がやってきますね。
前記事でも少し内容を書きましたが、キー・ホイ・クワンとミシェル・ヨー主演の映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(Everything Everywhere All at Once)が、なんと11部門ノミネートされました!
自分のことのように嬉しくって、思わずハッピーダンスしてしまった私ですが、なぜにここまで称賛される映画なのか、なぜにこんなに私を夢中させるのか、その辺をブログに熱く語ってみたい!と思ってました。
でも、いろいろな感想などを見聞きして思ったのです。
アメリカで今大ヒットして話題を呼んでるこの映画、、、日本ではヒットはしないだろうな、、、と。
だから、その理由を今回は書きたいと思います。
まず、最初にこの映画の概要を簡単に説明しますね。正直言って映画評論家の町山智浩さんのレビューを聞いた方が早いと思いますが、私なりの簡単にまとめはこれです。
夫と実父とコインランドリー業を経営してる中国系アメリカ人中年女性が、IRS(Internal Revenue Service=「アメリカ合衆国内国歳入庁」で日本の国税庁に相当する)から呼び出しを受け、担当監査員と面会してる最中に突然起こるマルチバース(Multiverse=多元宇宙、またはパラレルワールド)との遭遇をきっかけに、そのいくつかのマルチバースを交差しながら世界を救う任務を任され、人生において大切な物を見出していくという内容です。
基本的にテンポが速いSci-Fiアクション映画なのですが、コメディタッチに一部描かれ、これまたシリアスなテーマも交差してるので、正直一回観ただけでは理解できません。え?なに?何が言いたいの?どういう繋がりなの?と言った戸惑いが始終隠せず、先がほとんど予想できない内容で、ある意味最後まで飽きない傑作に仕上がってます。
ということで、私的にまとめたこの映画を理解する上でのポイントが以下です。
- アジア系アメリカ人移民の現実と苦悩
- 中年女性の現実と苦悩
- 親子の世代間におけるギャップとそれによる苦悩
- 人生における大切なもの
実は私、この映画を観た直後、正直言ってわかったようなわからないようなと言った不思議な感覚でした。だから、ネットでいろいろなレビュー記事やNPR(公共ラジオ)で取り上げられた番組を聞き直したりして、やっとこの映画の核の部分を理解することができたんです。
なぜ私がこの映画に強い共感を得たのか?というと、まさに上記に触れたポイント全てが、状況や程度は違うとはいえ、自分の今までの人生と重なって見えたからです。
おそらく、この映画がヒットした理由はそれです。たとえアジア系アメリカ人ではなくても、この国は移民の国ですから、移民が必ず経験する苦労話は、程度はいろいろあれど、概して共通してるのではないでしょうか。それと世代間のギャップ。これも人種関係なく経験してる人は多いでしょう。
そして、女性として生きる苦悩。女として、母として、女性が社会から受ける期待と目に見えない圧力は、たとえ男女平等が日本より進んでるアメリカでも存在します。50歳を目前して、私もこの映画の主人公が過去のマルチバースへ飛んだように、過去を振り返り「あの時異なった決断をしてたら、どんな人生だったろうか?」とふと考えることもあります。
とにかくそういった要素と、Sci-Fiアクションだったりコメディだったり、はたまたシリアスドラマだったりといった一見よくわからない迷路ような新しいスタイルが、この映画をヒットさせた原因ではないかと思うのです。
さて、前置きはここまでにして、お題にした「この映画が日本でヒットしない理由」について語りますね。
厳密に言うと、「この映画が日本でヒットしない理由」というより、「共感が生まれない理由」と書いた方が正しいかもしれません。
とにかくその理由は、まさにこれ。
日本はアメリカほど移民が多いわけではないから。
ということです。最近では人口減少が著しく人手不足もあり、日本も昔に比べたら随分アジア諸国からやってくる労働者は増えたようですね。とはいえ、アメリカとは全く状況が異なります。
映画館に足を運ぶ(もしくはストリーミング鑑賞する)多くの人達は、遠い昔から日本で生まれ日本で育った日本人が多いのではないでしょうか。まだまだ移民はかなりの少数派であり、移民が経験した苦悩などに共感する人がどれだけいるのか?それが私の最大の疑問なのです。
また、日本は私が日本にいた約25年前からあまり変わってません。変わったのは社会の貧困率が増えて、少子化が加速してる事ぐらい。ハリウッド映画だ!ヒット作だ!ってメディアで謳われて、一般大衆の多くが期待するものは、おそらく当時と何ら変わってないと思います。
そう、「ハリウッドのヒット作=大衆受けするもの」という図です。つまり大衆受けするものとは、簡単でわかりやすく制作にお金が掛かってる超大作と言われるものです。それと、白人信仰が強い日本では、白人が多数出演してる映画が好まれる傾向あると思います。
一方、この「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」は、一部のマニアには大ウケすると思うのです。カンフー映画好きで、特にそういった複雑な内容の映画やアートな映画を好む層には、新鮮に映るのではないでしょうか。
だって、この映画はまさに現代アート的な要素を持ち合わせてますからね。現代アートがわからないという人には、もしかしたら理解し難い映画なのかもしれません。
「話題のわりには大したことない」と期待外れな思いで、映画館を去る人が多いと予想してますが、あくまでもアメリカ生活が長い凡人のたわごとでもあります。
日本の状況について、ネットで得た情報と日本人コミュニティの方々の話からでしか知りませんから、実際住んで肌で感じてる人達と大きなギャップがあるかもわかりません。
だから再度強調しますが、外から日本を観察してる私の独断と偏見から得た予想なので、さらっと聞き流してくださいね。
いや、自分の予想が大ハズレであって欲しいという願いが強いというのが、本当のところではあるんですよ。それくらいこの映画に思い入れがあるんです😆
日本ではすでに劇場公開が封切られたようですね。映画館で観た方が迫力があると思うので、もし興味がある方はぜひ足を運んでみてください。
また、私のようにキー君に思いを寄せてる、かつてのハリウッド映画ファンの中高年層の方々。。。あの時の情熱が再燃するかもしれませんよ〜。おっさんになったけどカッコいいキー君をぜひ観に行ってらしてくださいね〜😄
最後に雑誌「BRUTUS」の記事載せておきますね。監督ダニエルズのインタビューです。
「A24史上No.1ヒット作『エブエブ』はアジアでどう受け入れられるのか。監督ダニエルズに訊く」—雑誌「BRUTUS」より
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