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アメリカはここ、クリーブランド。

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アジア顔の息子が演じた事の意義

ご無沙汰してました!約3ヶ月ぶりの更新ですね。

私はその後元気でした。それより2ヶ月半の夏休みはとにかく忙しくって!
我が家では、毎年夏休みは子供達をサマーキャンプに入れないんですよ。だからスポーツ活動や仲良し君の家族とプレイデイトをしながらバタバタ過ごすのですが、今年は例年以上に忙し過ぎてヘトヘトでした。

8月中旬過ぎから子供達の学校が始まり、少しはほっとするかと思ったら、なんと長男の課外活動がむちゃくちゃ過密スケジュールでしてね。というのも、実は長男がミュージカルのキャストに選ばれたんです。おかげで、その公演に向けて8月中旬からリハーサルが続いていたのでした。

このリサーサル、3週間続いたのですが、平日は夕方5時から夜10時まで続き、週末はお昼1時から夕方6時までと激務だったんです。私たち親の役目は、リハーサル会場まで往復1時間20分の送り迎えをする事で、とにかくその業務と学校の準備に毎日明け暮れてました。

息子がキャストとしてお選ばれたこのミュージカル、実は世界的に有名な作品のミュージカルでした。その名は、サウンド・オブ・ミュージック!そう、あの名曲「ドレミの歌」や「エーデルワイス」で有名な作品ですよね。そして、ミュージカルは地元の私立大学ボールドウィンウォレス大学(Baldwin Wallace University)とクリーブランドオーケストラのコラボレーションプロジェクトだったのです。

とはいえ、実際演奏したのはクリーブランドオーケストラではなく、アクロンシンフォニー(Akron Symphony Orchestra)という菅楽団でした。それでも、クリーブランドオーケストラに負けないくらい素晴らしい演奏をする楽団でしたよ。はじめてアクロンシンフォニーについて知る機会になったし、とにかくこれから彼らの演奏も楽しみだなと思ったくらい!

さて、この3週間にわたる激務の甲斐もあり、9月上旬に開催された二日間の公演は無事大盛況に終わりました。はじめて自分の子が大舞台に立つと言う事は、なんとも表現しようのない感動そのものですよ。あんなに小さかった子がここまで成長して、立派に舞台に立つなんて。。。親にとっては、一生に一度の経験ですからね。とにかく涙、涙の忘れられない出来事だったのです。

ところで、なぜ息子がキャストに選ばれたのか疑問を持つ方もいらっしゃるでしょうね。しかも、サウンド・オブ・ミュージックは、第二次大戦中のオーストリア人一家、ヴォン・トラップ家のお話です。息子はヴォン・トラップ家の次男カート役に選ばれました。

というのも、息子達が所属する地元合唱団が、オーディションの話を持ちかけて来たからなのです。オーディションの条件は、ボーイソプラノで背丈5フィート(150センチ以内)、それだけでした。

本人も私たちも、まさかオーディションに受かるなんて思いもよらなかったんです。私たち夫婦、恥ずかしいことに、サウンド・オブ・ミュージック自体全く詳しくなくて、映画さえも一回チラッと観ただけ。だから、あまり深く考えず、期待もせずにオーディションを受けさせたんです。もちろん息子も私たち同様に、映画を見たのは一度きり。

実際オーディションに受かり、サウンド・オブ・ミュージックについて少し調べるうち、オーストリア人、つまり白人の話であることを確認しました。私そっくりの息子は、白人ミックスとはいえ、ほぼアジア人顔です。本人も受かったとき、少し困惑顔に「僕、金髪じゃないけど大丈夫?」と言ってたんですね。

実は私たち、実際公演が近くまで、他のキャストについても殆ど知らなかったんです。プロの俳優は、ヴォン・トラップ家の父親トラップ大佐と修道院長を演じた二人だけ。しかも、この二人は白人ではありません。トラップ大佐役は黒人で、NYブロードウェイで経験を積んだ役者さんでした。そして、修道院長役はヒスパニック系で、こちらも長い事数々の有名な舞台に立ってるオペラ歌手でした。

また、主役であるマリア役、そして息子の共演者たちの殆どが、ボールドウィンウォレス大学の学生さん達だった事に、正直驚いたんですね。それはあまりにプロ並みの歌唱力と演技力だったから!そして、もちろん黒人、ヒスパニック系、アジア系と色々な人種が混じってました。

一方、先週タイムリーに、ウォルトディズニー社が新作映画「リトルマーメイド」実写版の予告編を初公開したのは、記憶に新しいと思います。そして、この公開と共にネットでは大きな論争が巻き起こりました。

なぜ、マーメイド役が黒人なのか?と。

ディズニー社がマーメイド役に黒人俳優を抜擢した理由と、息子がカート役に選ばれた理由は同じだと思います。

それは能力重視であったこと、そして多様性の重視です。

ここ数年、アメリカでは従来のメディアが与える社会的影響力の見直しが進んでます。今まで白人優位であったシステム上の人種差別がいかに社会に悪影響与えるか認識され、改善に向けて現状の見直しがされてるのです。

見直しの一貫として、人種・性別・心身障害に関係なく、インクルーシブに能力ある全ての人達にチャンスを与えるということ。メディアにしても普通の企業にしても色々な社会の場面で、マジョリティ、つまり白人や男性や健常者が決定権と優先権を今まで普通に維持していた従来のやり方をなくし、能力に応じて積極的にマイノリティにチャンスを与えると言う事です。

また、積極的にマイノリティを子供番組やおもちゃなどで起用し表現する事が、これからの未来を担う子供達にも大きな励ましになります。例えば、おもちゃ売り場では、色々な肌と髪の色の人形が棚に並ぶ事、クレヨンの肌色が一色ではなく数色に及ぶなど、最近そういった企業の試みが際立って見受けられるようになりました。

息子が白人であるカートを演じた事に対して疑問を持つ人は、おそらくマーメイド役が黒人である事に違和感を覚え、議論する人たちと同じでしょう。

でもその作品の重要視されるべきポイントは、決して見た目ではない事に気付いて欲しいのです。評価されべき点は「歌唱力」と「演技力」そのものだと思うのです。

そして、その作品が与える社会的影響も考えて欲しいのです。作品を観る子供達に夢や希望を与えるか否かは、グローバル化と多様化が進む移民の国アメリカでは、特にとても重要なポイントだと思います。

今回息子がカートを演じた事は、アジア人顔の自分でもできるのだという大きな自信を息子に与えたと信じて疑いません。そして、息子が演じた事により、それを観た子供達に夢と希望を与えた事は、想像以上に大きな意義があったと実感しました。

正直、日本に住んでいた頃の自分だったら、おそらくマーメイド役が黒人?カート役がアジア人?という疑問を抱いてたと思います。なぜなら、そういう風に白人信仰が強い社会*に刷り込まれながら育ったから。

アメリカでマイノリティとして3人の子供達を育児し、多様性に富む社会を見て学び、今まで見えてないかったものが見えて来てると日々感じてます。

大切なことは「気づくこと」。

そして、今まで当然だと思ってた既成観念を捨て、価値観を社会に合わせてアップデイトして行く事だと思います。

そうでなければ、時代について行けないなあとつくづく思うのでありました。


*昔から日本は、肌が白いことが良いと言う風潮があり、それに執着してると思います。メディアにしても、有色人種より白人をモデルなどでも好む傾向がありますからね。

【関連記事】

失望とこれから

(7月9日追記・更新)

ついに女性の権利が奪われた

もうすでに日本でも報道されてますが、ついに6月24日アメリカでは女性の権利のひとつが奪われました。

このブログでもつい最近書きましたが、人工妊娠中絶をアメリカ合衆国憲法により保障された権利とし、同時に堕胎禁止を違憲としたロー判決が、24日に米国最高裁により覆されたため、女性が中絶できる権利が奪われたのです。

これにより、オハイオ州を含む11州で自動的に中絶禁止になります。

オハイオ州では、以下の内容になります。

(胎芽の)心音が確認された時点(妊娠周数が約5〜6週)で堕胎禁止となり、中絶処置を行った、もしくはその処置を幇助した医療機関や医療従事者は重罪の責務を課せられる。

レイプ、近親相姦、そして胎芽に重度染色体異常が確認されても、例外にはなりません。例外は母体の命と健康に危険が確認された場合のみ。

この判決は、予想通りでした。まさかこんなに早く結果が出るとは思ってませんでしたがね。最高裁の裁判官は9人で構成されてます。そのうちたったの3人しか民主党大統領が、指名したリベラル派の裁判官はいません。当然勝てるわけないです。

保守派の裁判官6人のうち、トランプが任期中に指名した裁判官が3人もいます。そして保守派裁判官全6人のうち一番質悪いのが極右とも言える超保守派のトーマス判事。今回の中絶禁止のみならず、同性婚やはたまた避妊薬など避妊自体に関しても禁止の意向を示唆してます。

因みに余談ですが、トーマス判事の妻ジニーは2021年1月6日に起きた国会議事堂襲撃事件に関与した疑いがあるにも関わらず、今のところなんの法的措置も取られてません。

以前も書きましたが、オハイオ州のDeWine知事はもちろん、オハイオ州議会も保守派である共和党が過半数を占めてます。つまり、選挙で民主党の知事を選出し、オハイオ州議会も民主党の議員が過半数を占めない限り、オハイオ州における中絶禁止はなくなりません。

想像してみてください

日本人は概して政治の話を、普通の会話でしたがりませんよね。アメリカ人も社交の場ではしませんが、社会問題に関してたまに話題に出ることもあります。でも日本人は社会問題さえも、あまり話題にしないし、政治や社会の話題をする人に対して面倒くさい堅物という印象がまだあると思います。事実、私も20代〜30代といった若い頃は、そういった印象を持ってたし、政治はもちろん選挙にも今ほど興味がありませんでした。

でも子供たちを産み育ててる段階で、少しずつそれが変化を遂げて行きました。大きく自分の関心が政治に向かったのは、やはりトランプの登場です。自分には関係ないと知らないふりができない状況になってしまったんですよ。そんな難しいことは知りたくない、関わりたくないと思っても、人種差別や乱射事件が増加し、女性の権利が奪われる現実は避けられないんです。子供達の将来を考えれば考えるほど、今アメリカが向かってる先は、時代から逆行し闇でしかありません。

もしこのブログを読んでるあなたが中絶反対派、もしくは共和党支持者、もしくはあなたの家族が共和党支持者でも自分には関係ないと思ってるのなら、静かに以下のことを想像してみてください。

  • もしあなたの妻やパートナーがレイプされレイプ犯の子供を妊っても、「神からの授かりもの」として喜び、自分の子供として愛し、成人するまで育てることができますか?
  • もしあなたの娘がレイプされレイプ犯の子供を妊っても、9ヶ月の妊娠期間を耐え出産しろと言えますか?
  • もしあなたの娘が近親相姦の被害に遭い子供を妊っても、9ヶ月の妊娠期間を耐え出産しろと言えますか?
  • もしあなたの妻やパートナーが子宮外妊娠をし処置を必要としても、胎芽もしくは胎児心拍数があるが故、処置をできずに感染症を起こし、命を落としても良いのですか?
  • 金銭的に余裕がなくても、子供を産まなければならない状況になったらどうしますか?
  • もしあなたの子供が同性愛者で、今まで幸せな結婚生活を送っていたのに、仮に突然同性婚姻制度が破棄され社会保障もなにもかも失ってしまったらどうしますか?
  • もし仮に避妊薬や避妊具が禁止されたらどうしますか?

望まない妊娠をし、中絶という選択をする女性に、それを自ら喜んでする人なんていません。心身ともにボロボロになり悩みに悩んで決断してると思います。その後だって一生消えないの心の傷を負い、その傷を抱えながら生きて行かなくてはならないのです。

そして、当たり前ですが、妊娠は女性一人ではできません。男性も関わってるのに、なぜ女性だけが9ヶ月の妊娠期間と命にも関わる出産を耐えなければいけないのしょうか?
望まない妊娠により精神を壊すのことは大いにあり得るんですよ。なぜそんな負担を女性だけが抱えなければならないのでしょうか?
女性個人の体のことなのに、なぜ妊娠・出産しない男性が大多数を占める政府が決めるのしょうか?

あなたにできること

もし今アメリカで起ってることに憤り感じ、なにか行動をしたいと思ったら、たとえ家族があなたの信念と反対でも、ぜひ実行してください。一人一人の行動が大きな意味を持ち、変化へと繋がって行くはずです。そうやってアメリカは成長し、変化を遂げてきたわけですから。

もしアメリカ市民権を持ってるのなら、今年11月の中間選挙でぜひ投票へ足を運んでください。

日本人は米国籍を取得しない人が多いです。私も去年初めまでそうでした。人それぞれ事情があると思うけど、やっぱり日本が二重国籍を認めないのが大きな理由だと思います。私も二重国籍を持ってたら楽なのに〜と、どれほど思ったことか!

ただ、もし米国籍取得をするか否かを今悩んでるのなら、ぜひ取得して投票に行って欲しいと願ってます。私も悩んで悩んだ挙句に決断しました。

パンデミック渦中、日本に頻繁に帰国するわけでもないから、後悔はありません。それに、仮に将来日本国籍再取得を望んでも、元日本人であれば手続きはそんなに難しくないとも聞きました。

ですから、今もし参政権を得たいけど悩んでるのなら、ぜひ米国籍取得を検討して欲しいのです。たとえ今年の中間選挙に間に合わずとも、2年後の大統領選に一票を貢献して貰えたらと、切に願わずにいられません。

もしどうしても米国籍取得を決心できないのであれば、女性の権利を支持する市民運動団体や政治家に寄付という形で貢献もできます。以下そのリストです。(リストは後日増える可能性がありますので、興味がある方は私のツイッターアカウント(@eccochann)をフォローして更新を待ってくださいね。)

中絶に関するサポートをしてる非営利団体

中絶禁止になった今、他州へ中絶をしに出向く費用や中絶処置、また訴訟費用など、こういった非営利団体は運営資金が必要になります。ぜひ資金援助にご参加ください。

嘆願署名運動のサイト

現在行われてる嘆願署名運動のひとつです。名前とメールアドレスと郵便番号を記入するだけです。ぜひご参加ください。

民主党候補者

とりあえず知事選と上院議員選の民主党候補者だけ載せます。キャンペーン資金が集まるほど、政治運動キャンペーンに大きな効力が生まれます。ぜひ寄付をしてみてください。

  • Nan Whaley: オハイオ州知事選に出馬してるNan Whaleyさん(元デイトン市長)のサイトです。
  • Tim Ryan :オハイオ州上院議員選に出馬してるTim Ryanさんの公式キャンペーンサイトです。

ここまでブログを読んでくださったみなさま、ありがとうございます!
このブログを読んでる方の中で、私と賛同して一緒に戦ってくれる同志がいることを願ってます🙏
なにかを変えるためには行動するしかありません。
あなたもぜひ一緒に戦いましょう💪

【7月9日追記・更新】

オハイオ州では子宮外妊娠(ectopic pregnancy)は例外に当て嵌まり母体を救う処置として中絶できるらしいですが、依然とレイプや近親相姦の被害であっても中絶禁止です。州外で中絶を受ける上では、本人は重罪の責務を課せられることはないとのこと。詳しくは、こちら↓の記事を参考にどうぞ。

また、7月8日にバイデン大統領より、中絶処置アクセスを守るために大統領命令が発足しましたが、オハイオ州ではあまりその効果がないとのことです。詳しくは、こちら↓の記事を参考にどうぞ。

最後になりましたが、8月2日は2回目の予備選挙投票日です。州議会の議員と選挙区変更案に関する予備選挙が行われます。その情報はこちら↓
https://www.ohiosos.gov/elections/voters/current-voting-schedule/2022-schedule/

オハイオ州の銃規制について

(7月9日追記・更新)
前回のブログ記事でも最後に触れましたが、本当は中絶に関する私の考えを書くつもりでした。でも、あの記事をちょうど書き上げた直後に、なんとテキサス州の小学校で乱射事件が起きてしまったのです。

児童19人を含む21人が殺害されました。まったく罪のない命がまた銃による暴力で失われてしまったのです。そして、再び起こった学校での乱射事件です。しかも現場は小学校。。。私の息子達も小学生です。

このニュースを知った瞬間、なんとも言い様のない恐怖が走りました。もしうちの子達の学校で、乱射事件が起こっていたら?そんな恐怖がとっさに脳裏を走りました。

一瞬にして命を落とした子供達と先生、そしてその家族の悲しみ。また生存した子供達と先生達の恐怖。なにからなにまで想像するだけで、深い悲しみと怒り、そして恐怖が私を襲いました。この事件は他人事ではないんです。対岸の火ではないんですよ。

今アメリカでは、再び銃規制の声が高まってます。毎日事件の詳細が明らかになるにつれ、人々が銃規制の緩さとそれを可能にしてる政治家達に批判を向けてます。

大量殺傷できる自動小銃が簡単に手に入る先進国は、アメリカくらいですよ。
免許証もなく銃を購入できる先進国は、アメリカくらいですよ。
未成年でも銃を購入できる先進国は、アメリカくらいですよ。

それっておかしくないですか?
日本から見たら狂った国に見えません?

もう何度も乱射事件は起きてるんですよ。今回の事件が起きる10日前にもありましたよね。白人至上主義者のヘイトによるスーパーマーケット乱射事件(ニューヨーク州バッファロー市)では、黒人10人が射殺されたばかり。そして、小学校乱射事件の後にも、オクラホマ州の病院で、そしてこの前の週末はフィラデルフィアの夜の街とテネシー州でも。。。多過ぎてもうひとつひとつニュースの詳細を追えない状況です。

今年は5月後半の時点で、すでに214件も起きてるそうです。ちなみに、この統計の参考元でのmass shooting (=「(多数)乱射事件」)の定義は、「4人以上が一度に射殺される」状況のことだそうです。

乱射事件だけじゃないです。銃による殺人事件で亡くなった人の数は、なんと17,300人だそうです。まだ今年は半分も過ぎてないんですよ!酷過ぎません?

じゃあ、どうしてそうなってしまったのか?

それは、端的に言って銃規制の緩和です。

ただ、この点に関しては、銃規制緩和を推し進めてる保守派は異論を唱えてるので、「銃規制の緩和が原因だと私は思ってる」と言った方がよさそうですね。ちなみに、世論は銃規制強化賛成に大きく動いており、最新世論調査では88%の国民が銃購入時におけるバックグランドチェック(犯罪歴などの審査)を支持してるとなってます。

とにかく、私の意見どうこうよりも、事実をここで書いた方が良いと思うので、オハイオ州における銃規制の関する法律について書きたいと思います。

オハイオ州の銃規制の現状

オハイオ州は割と銃規制は緩い方です。Everytown for Gun Safetyという銃規制を推奨する非営利団体の統計によると、銃規制が一番厳しい州はカリフォルニアで、オハイオ州は50州中30位とランクするほど緩いのです。ちなみに、一番緩い州はミシシッピです。

また、私がググって見つけた別の資料参考元(World Population Review)では、オハイオ州は25位で、上位と最下位は同じです。 Gifford.orgという銃規制を推奨する非営利団体での、オハイオ州の順位も上記と同じ25位で、上位と最下位も同じ結果になってます。

つまり、オハイオ州は中間かそれ以下の順位を保つ銃規制の現状です。なんだ、そんなに悪くないじゃん?って思う人もいるかもしれませんね。

ところが、オハイオ州では最近新しい法案が議会を通り、知事による承認署名も得たので6月13日から施行されます。それがこのふたつ。

  1. 21歳以上で市民または永住権をもつ成人なら誰でも、無許可で公共の場所で銃を携行(concealed carry)できる。
  2. 無許可でLoaded(装填済)拳銃を自動車などの車両に携帯できる。

こう言った法が施行されると、銃による犯罪が増えると専門家は警報を鳴らしてます。事実、この法案が可決された時、オハイオ州の警察組合が反対をしました。

ということで、現在施行されてる銃規制の内容を簡単にまとめた表が以下です。参考元は、ウィキペディアのGun laws in Ohioです。また、この表がブラウザ上だと見難いと思うので、PDFファイルにもしました。参考にどうぞ。

 

 

長銃

拳銃

関連法令

注釈

購入において州による許可が必要か?

No (必要なし)

No (必要なし)

火器登録は必要か?

No (必要なし)

No (必要なし)

Assault Weapon法は適用されてるか否か?

No (不適用)

No (不適用)

O.R.C. 2923.11

弾倉容量の制限ありか否か?

No (なし)

No (なし)

所有する上での免許

No (なし)

No (なし)

隠し持ち銃携行 (=concealed carry)の許可が必要か?

N/A

Yes (必要)

O.R.C. 2923.111

O.R.C. 2923.12

O.R.C. 2923.125

ただし、21歳以上で市民または永住権をもつ成人なら誰でも、無許可で公共の場所で銃を携行(concealed carry)できる。(2022年6月13日施行)

銃露出携行(=open carry)の許可が必要か?

No (必要なし)

No (必要なし)

O.R.C. 2923.111O.R.C. 2923.16

無許可でLoaded(装填済)拳銃を自動車などの車両に携帯できる。(2022年6月13日施行)

城の原則/正当防衛法は適用するか?

Yes (適用)

Yes (適用)

O.R.C. 2901.09

州の専占権

Yes (適用)

Yes (適用)

O.R.C. 9.68

NFA武器の規制が適用されてるか否か?

No (不適用)

No (不適用)

O.R.C. 2923.17

*Shall certify?

Yes

Yes

O.R.C. 311.43

購入から45日以内、また住所変更から45日以内に免許取得する必要がある。

Peaceable Journey法が適用されてるか?

No (不適用)

No (不適用)

個人売買において買手に対するバックグラウンドチェックが必要とされてるか否か?

No (必要なし)

No (必要なし)

**Duty to inform?

No

Yes

O.R.C. 2923.12

O.R.C. 2923.16

購入において年齢制限があるか否か?

Yes (あり) 18歳以上

Yes (あり) 21歳以上

O.R.C. 2923.211(B)

個人売買でもこの年齢制限は適用される。

以下にて、上記の項目の説明です。ウィキペディアの「アメリカ合衆国の銃規制」ページの「各州の規制事項」欄から概ね引用しました。

長銃

長銃(Longgun)とはライフルや散弾銃(ショットガン)など大型の銃を指す。主に狩猟やスポーツを目的とする。Longgunの最短銃身はライフルで16インチ以上、ショットガンで18インチ以上と規制されている。但し、全長が26インチ以上ならば銃身長が18インチ未満でも合法的に所持出来る(例としてレミントンのTac-14やモスバーグから販売されているショックウェーブ。銃身長は14インチでピストルグリップだが全長が26.37インチで且つ最初からピストルグリップが付いた状態で販売する為SBSにはならない)。銃身を切り詰めたショットガンなどは所有するだけで犯罪になる。

拳銃

拳銃は片手で操作可能な小型の銃を指す。主に自己防衛・護身を目的とする。ストック(肩当て)が付くと、Longgunと見なされる為、拳銃にストックを付けると『最低銃身16インチの規定を満たさないライフル』と見なされ所持するだけで犯罪になる。しかし今日では「ピストル・スタビライジング・ブレース」という物が各社からARピストル用やAKピストル用に「あくまで」腕で支える為の補助具として販売されている(2018年現在、ATFはブレースを肩付けして撃つことを公的に認めている)。但し、「あくまで」ピストル扱いの為、ハンドガードレールにフォアグリップなどは付けられない。(連邦法でピストルカテゴリーの銃にピストルグリップは1つと定められている)

一般的に長銃は狩猟・スポーツといったレクリエーション目的で販売・使用される為、自己防衛・護身を目的とし携帯性の高い小型拳銃よりも規制が緩い傾向にある。また法律は州単位で定められているとはいえ、都市部(例:ニューヨーク市など)を管轄する地方自治体やその市警によって条例等でさらなる規制がかけられている場合が多い。一般的に都市部の規制は郊外に比べ厳しい。

州による許可

State Permit to Purchase:州から許可を貰わなければ武器を購入できないのか否か。(例:Noであれば州の許可無しに購入が可能)ただし、所持許可がそのまま購入許可になる場合もあるので(所持許可があれば購入毎に毎回許可が必要ではない)一概には言えない。

火器登録

Firearm Registration:火器を所有している旨を報告し、それを公式に登録しなければならないか否か。ただし審査を経た上で発行される許可証及び免許証を火器登録と見なしている場合もあるため本項がNo回答になっているからといって規制が緩いということにはならない。(例:Noであれば登録の必要は無い)

Assault Weapon法

Assault Weapon Law:大型ライフルなど殺傷能力が高く、護身用というよりむしろ攻撃用武器に属する銃の所有に関しての規制や特別法の有無。(例:Noであれば攻撃用武器に対しての特別措置は無い)

免許

Owner License:銃を所有するのに適切なライセンス(免許や資格)の保持が必要か否か。(例:Noであればライセンス無しで銃が所有できる)

携帯許可

Carry Permits:銃を携帯する(家から持ち出す)のに許可証などが必要か否か。ただしケースに入れた場合、装填している場合、自動車の場合、歩行の場合など非常に細分化された項目であるため詳細は州の公式サイト等を参照されたい(例:Noであれば許可無く携帯することが可能)。連邦法により、各州・市・郡・連邦で公式に認められた警察官が警察官の身分証明書とバッジを携帯している場合は携帯方式の如何を問わず全米50州内での銃の携帯が認められている。
携帯許可は州発行の免許なので効力は基本的に発行州内に限られる。ただし、各州がそれぞれ相互認知をしていて例えばネバダ州発行の携帯免許を所有している者は他の20余州でも合法に携帯する事が出来る。同様に、相互認知している他州の携帯免許所持者はネバダ州内で合法に銃器を携帯する事が出来る。

銃の携帯は基本的に、
Open carry(ホルスターあるいは生身など他人に見える状態で携帯)
Concealed Carry(衣服の下やかばんの中など他人に見えない状態での携帯)

の二つに分けられるが、下記表にはOpen CarryとConcealed carryの別での情報は表示されていない。
現在、多くの州では、Open Carryは免許不要でConcealed Carryには要免許の規定が取られている州が大半であるが約半数の州は公共の場におけるOpen carryも禁止している。
なお、Open Carry、Concealed Carryいずれの場合にも、Loaded(装填済)とUnloaded(弾は銃と別に所持)との区別があり、違反した場合には一項目ずつ罪が加算される。
例えば規制の有る州で、かばんの中(あるいは衣服の下)に弾を装填済みで州に未登録の銃を所持して道を歩いていたとすると、1 Carrying Loaded firearm, 2 Carrying concealed weapon,3 Possessing unregistered firearm のそれぞれ3項目の別々の罪状で訴追される可能性がある。
カリフォルニア州では、車のグラブボックスでも同様の罪になるが、自動車内を私有地内とみなすか公共の場とみなすかは各州法でまちまちである。
また、州の携帯免許を所持していても、学校敷地内や連邦政府施設内(含む郵便局)、空港敷地内など、連邦法で携帯を禁止されている場所などでは連邦法違反になる。
多くの州では、免許の有無や携帯の方式に関わらず、飲食店(特に酒類を提供するバーやクラブなど)における携帯を禁止している州が多く、多くの店では入り口に『No Firearms』『No Guns』の表示を掲げている、もしくは施設所有者や係員に『銃器持ち込みお断り』と告げられたにも関わらず退去しない場合は、銃の携帯免許の有無に関わらず『住居侵入罪』が適用される。

州の専占権

State Preemption of Local Restrictions:州政府が銃の販売数や流通量などをコントロールできるか否か。(例:Noであれば州政府はマーケットに干渉することができない)

NFA武器の規制

NFA Weapons Restriction:NFA(National Firearms Act)で括られた武器の種類(フルオートウェポン(マシンガン)やサウンドサプレッサー(サイレンサー)や肩付けのストックが付いていて銃身長がライフルでは16インチ以下SBR(ショートバレルライフル) ショットガンでは18インチ以下のSBS(ショートバレルショットガン)など軍や政府でも使用される高性能武器で、いずれも政府に登録されている)が規制されているか否か。Noであればフルオートウェポンの場合は1986年以前に登録された物は民間人の間で流通、所持が許可されていて、200ドルの税金を納める、指紋捺印等の手続きを踏めば購入可能である。それ以降のものはフェデラルファイアーアームズライセンス保有者(銃砲店等)のみが所持できる。サウンドサプレッサーは最新のものも200ドルの税金を納める、指紋捺印等の手続きを踏めば購入可能である。2018年現在は約6ヶ月程でタックススタンプが送られてくる。

Peaceable Journey法

Peaceable Journey Law:直訳すれば「平和な旅の法律」。在住地とは異なる法律を適用している州に越境して移動する際、弾丸が装填されていた場合などに違法行為となるか否か。(Noであれば本法律は適用されないため違法行為にはならない。Yesである場合は本法律が適用されている州であり、たとえ所有者が他州にて合法で所有している銃であっても装填済みの場合、違法行為となり逮捕される)

また上記のウィキペディア引用文にて説明されてない項目がふたつあるので、その説明を以下にしてします。

*Shall Certify

Shall Certifyとは、拳銃を隠し持つ(concealed carry of a handgun)免許を取得する必要があると同時に、火器所有自体が法で禁止されない限り、免許を受け取れるべきであるということ。つまり、他の州では、法執行官(警察官・保安官など)による、拳銃を隠し持つ(concealed carry of a handgun)免許を否定する選択の自由があるゆえ、あえてこのようなShall Certifyと明記してる。

**Duty to inform

Duty to informとは、法執行官(警察官・保安官など)による職務質問を受けた場合、火器類を所持してるか否かを明らかにしなければならない法。この法は、火器類を隠し持ってる場合に重要なポイントになる。

まとめ

と言った感じで、簡単にまとめられた表と一部の項目だけを訳しましたが、実際の法律内容はもっと詳しく条件なども盛り込まれてます。

また、乱射事件が起きるたびに問題視される内容は言及されてなかったり。例えば、長銃は購入する上で18歳という年齢制限あるとはいえ、弾丸・弾倉やアクセサリー(例:ラスベガス乱射事件で犯人が使用したbump stocksなど)などの所有制限や、長銃所有自体に関してははっきり書かれてないかったりしてます。一般人からしたら、購入も所有も同じにしか見えないけど、そういう微妙な違いがある意味盲点であり、犯罪者にとっては法を潜り抜けれる抜け穴なのだと思います。

オハイオ州では、過去に2件乱射事件が起こりました。2012年にChardon市の高校で起こった事件(Chardon High School shooting)と、そして近年2019年にデイトン市のバーで起こった事件(2019 Dayton shooting)です。後者の乱射事件では、今回テキサス州の小学校で起こった乱射事件をきっかけに焦点が再度当てられた、長銃AR-15が使用されました。

ちなみに、この銃の殺傷力の強さをリポートした報道番組「60ミニッツ」を最近観ました。この番組を観ると、脳の発達がまだ未熟な18歳の人間が、なぜこの銃を購入できるのか理解に苦しみますよ。

実は私、銃による被害を身近で経験したことがあります。十数年前、当時アシスタントとして働いてたスタジオの上司が隣人に銃殺されたのです。その体験談は別の記事で詳しく書きたいですが、この他にも親戚が隣人と口論になり銃殺されたり、以前住んでいた自宅に銃弾が撃ち込まれたり、息子たちの学校の近くで銃撃があり学校がロックダウンされたり。。。

とにかく、銃による被害は身近過ぎるのです。いつどこで自分が被害者になるのかわからない状況。それが今のアメリカです。

もしこの記事を読んでるあなたが米国で有権者であるのなら、今年の中間選挙に向けて今一度立ち止まって考えてもらいたい。いったい誰が銃規制強化を強く薦めてるのかと。

有権者じゃなくても、アメリカに住む者なら誰でも、身近に関わって来る問題です。自分たちができる事を、これを機会にぜひ模索してもらえたらなと願ってます。


【追記(7月9日編集・更新)】

6月13日に、DeWine知事が承認署名したことにより法案が施行され、同時に学校の職員や教師が学校内に銃を持ち込む事が許可されました。また、銃を携帯するにあたって取扱などの訓練を必要されてたのですが、従来の訓練時間700時間からたったの24時間に短縮されました。24時間とは、警官に課せられる24時間訓練時間と同じです。


参考サイト出典元

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