(7月9日追記・更新)
前回のブログ記事でも最後に触れましたが、本当は中絶に関する私の考えを書くつもりでした。でも、あの記事をちょうど書き上げた直後に、なんとテキサス州の小学校で乱射事件が起きてしまったのです。
児童19人を含む21人が殺害されました。まったく罪のない命がまた銃による暴力で失われてしまったのです。そして、再び起こった学校での乱射事件です。しかも現場は小学校。。。私の息子達も小学生です。
このニュースを知った瞬間、なんとも言い様のない恐怖が走りました。もしうちの子達の学校で、乱射事件が起こっていたら?そんな恐怖がとっさに脳裏を走りました。
一瞬にして命を落とした子供達と先生、そしてその家族の悲しみ。また生存した子供達と先生達の恐怖。なにからなにまで想像するだけで、深い悲しみと怒り、そして恐怖が私を襲いました。この事件は他人事ではないんです。対岸の火ではないんですよ。
今アメリカでは、再び銃規制の声が高まってます。毎日事件の詳細が明らかになるにつれ、人々が銃規制の緩さとそれを可能にしてる政治家達に批判を向けてます。
大量殺傷できる自動小銃が簡単に手に入る先進国は、アメリカくらいですよ。
免許証もなく銃を購入できる先進国は、アメリカくらいですよ。
未成年でも銃を購入できる先進国は、アメリカくらいですよ。
それっておかしくないですか?
日本から見たら狂った国に見えません?
もう何度も乱射事件は起きてるんですよ。今回の事件が起きる10日前にもありましたよね。白人至上主義者のヘイトによるスーパーマーケット乱射事件(ニューヨーク州バッファロー市)では、黒人10人が射殺されたばかり。そして、小学校乱射事件の後にも、オクラホマ州の病院で、そしてこの前の週末はフィラデルフィアの夜の街とテネシー州でも。。。多過ぎてもうひとつひとつニュースの詳細を追えない状況です。
今年は5月後半の時点で、すでに214件も起きてるそうです。ちなみに、この統計の参考元でのmass shooting (=「(多数)乱射事件」)の定義は、「4人以上が一度に射殺される」状況のことだそうです。
乱射事件だけじゃないです。銃による殺人事件で亡くなった人の数は、なんと17,300人だそうです。まだ今年は半分も過ぎてないんですよ!酷過ぎません?
じゃあ、どうしてそうなってしまったのか?
それは、端的に言って銃規制の緩和です。
ただ、この点に関しては、銃規制緩和を推し進めてる保守派は異論を唱えてるので、「銃規制の緩和が原因だと私は思ってる」と言った方がよさそうですね。ちなみに、世論は銃規制強化賛成に大きく動いており、最新世論調査では88%の国民が銃購入時におけるバックグランドチェック(犯罪歴などの審査)を支持してるとなってます。
とにかく、私の意見どうこうよりも、事実をここで書いた方が良いと思うので、オハイオ州における銃規制の関する法律について書きたいと思います。
オハイオ州の銃規制の現状
オハイオ州は割と銃規制は緩い方です。Everytown for Gun Safetyという銃規制を推奨する非営利団体の統計によると、銃規制が一番厳しい州はカリフォルニアで、オハイオ州は50州中30位とランクするほど緩いのです。ちなみに、一番緩い州はミシシッピです。
また、私がググって見つけた別の資料参考元(World Population Review)では、オハイオ州は25位で、上位と最下位は同じです。 Gifford.orgという銃規制を推奨する非営利団体での、オハイオ州の順位も上記と同じ25位で、上位と最下位も同じ結果になってます。
つまり、オハイオ州は中間かそれ以下の順位を保つ銃規制の現状です。なんだ、そんなに悪くないじゃん?って思う人もいるかもしれませんね。
ところが、オハイオ州では最近新しい法案が議会を通り、知事による承認署名も得たので6月13日から施行されます。それがこのふたつ。
- 21歳以上で市民または永住権をもつ成人なら誰でも、無許可で公共の場所で銃を携行(concealed carry)できる。
- 無許可でLoaded(装填済)拳銃を自動車などの車両に携帯できる。
こう言った法が施行されると、銃による犯罪が増えると専門家は警報を鳴らしてます。事実、この法案が可決された時、オハイオ州の警察組合が反対をしました。
ということで、現在施行されてる銃規制の内容を簡単にまとめた表が以下です。参考元は、ウィキペディアのGun laws in Ohioです。また、この表がブラウザ上だと見難いと思うので、PDFファイルにもしました。参考にどうぞ。
法 |
長銃 |
拳銃 |
関連法令 |
注釈 |
購入において州による許可が必要か? |
No (必要なし) |
No (必要なし) |
|
|
火器登録は必要か? |
No (必要なし) |
No (必要なし) |
|
|
Assault Weapon法は適用されてるか否か? |
No (不適用) |
No (不適用) |
|
|
弾倉容量の制限ありか否か? |
No (なし) |
No (なし) |
|
|
所有する上での免許 |
No (なし) |
No (なし) |
|
|
隠し持ち銃携行 (=concealed carry)の許可が必要か? |
N/A |
Yes (必要) |
O.R.C. 2923.111 O.R.C. 2923.12 O.R.C. 2923.125 |
ただし、21歳以上で市民または永住権をもつ成人なら誰でも、無許可で公共の場所で銃を携行(concealed carry)できる。(2022年6月13日施行) |
銃露出携行(=open carry)の許可が必要か? |
No (必要なし) |
No (必要なし) |
O.R.C. 2923.111O.R.C. 2923.16 |
無許可でLoaded(装填済)拳銃を自動車などの車両に携帯できる。(2022年6月13日施行) |
城の原則/正当防衛法は適用するか? |
Yes (適用) |
Yes (適用) |
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|
州の専占権 |
Yes (適用) |
Yes (適用) |
|
|
NFA武器の規制が適用されてるか否か? |
No (不適用) |
No (不適用) |
|
|
*Shall certify? |
Yes |
Yes |
購入から45日以内、また住所変更から45日以内に免許取得する必要がある。 |
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Peaceable Journey法が適用されてるか? |
No (不適用) |
No (不適用) |
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個人売買において買手に対するバックグラウンドチェックが必要とされてるか否か? |
No (必要なし) |
No (必要なし) |
|
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**Duty to inform? |
No |
Yes |
O.R.C. 2923.12 O.R.C. 2923.16 |
|
購入において年齢制限があるか否か? |
Yes (あり) 18歳以上 |
Yes (あり) 21歳以上 |
個人売買でもこの年齢制限は適用される。 |
以下にて、上記の項目の説明です。ウィキペディアの「アメリカ合衆国の銃規制」ページの「各州の規制事項」欄から概ね引用しました。
長銃
長銃(Longgun)とはライフルや散弾銃(ショットガン)など大型の銃を指す。主に狩猟やスポーツを目的とする。Longgunの最短銃身はライフルで16インチ以上、ショットガンで18インチ以上と規制されている。但し、全長が26インチ以上ならば銃身長が18インチ未満でも合法的に所持出来る(例としてレミントンのTac-14やモスバーグから販売されているショックウェーブ。銃身長は14インチでピストルグリップだが全長が26.37インチで且つ最初からピストルグリップが付いた状態で販売する為SBSにはならない)。銃身を切り詰めたショットガンなどは所有するだけで犯罪になる。
拳銃
拳銃は片手で操作可能な小型の銃を指す。主に自己防衛・護身を目的とする。ストック(肩当て)が付くと、Longgunと見なされる為、拳銃にストックを付けると『最低銃身16インチの規定を満たさないライフル』と見なされ所持するだけで犯罪になる。しかし今日では「ピストル・スタビライジング・ブレース」という物が各社からARピストル用やAKピストル用に「あくまで」腕で支える為の補助具として販売されている(2018年現在、ATFはブレースを肩付けして撃つことを公的に認めている)。但し、「あくまで」ピストル扱いの為、ハンドガードレールにフォアグリップなどは付けられない。(連邦法でピストルカテゴリーの銃にピストルグリップは1つと定められている)
一般的に長銃は狩猟・スポーツといったレクリエーション目的で販売・使用される為、自己防衛・護身を目的とし携帯性の高い小型拳銃よりも規制が緩い傾向にある。また法律は州単位で定められているとはいえ、都市部(例:ニューヨーク市など)を管轄する地方自治体やその市警によって条例等でさらなる規制がかけられている場合が多い。一般的に都市部の規制は郊外に比べ厳しい。
州による許可
State Permit to Purchase:州から許可を貰わなければ武器を購入できないのか否か。(例:Noであれば州の許可無しに購入が可能)ただし、所持許可がそのまま購入許可になる場合もあるので(所持許可があれば購入毎に毎回許可が必要ではない)一概には言えない。
火器登録
Firearm Registration:火器を所有している旨を報告し、それを公式に登録しなければならないか否か。ただし審査を経た上で発行される許可証及び免許証を火器登録と見なしている場合もあるため本項がNo回答になっているからといって規制が緩いということにはならない。(例:Noであれば登録の必要は無い)
Assault Weapon法
Assault Weapon Law:大型ライフルなど殺傷能力が高く、護身用というよりむしろ攻撃用武器に属する銃の所有に関しての規制や特別法の有無。(例:Noであれば攻撃用武器に対しての特別措置は無い)
免許
Owner License:銃を所有するのに適切なライセンス(免許や資格)の保持が必要か否か。(例:Noであればライセンス無しで銃が所有できる)
携帯許可
Carry Permits:銃を携帯する(家から持ち出す)のに許可証などが必要か否か。ただしケースに入れた場合、装填している場合、自動車の場合、歩行の場合など非常に細分化された項目であるため詳細は州の公式サイト等を参照されたい(例:Noであれば許可無く携帯することが可能)。連邦法により、各州・市・郡・連邦で公式に認められた警察官が警察官の身分証明書とバッジを携帯している場合は携帯方式の如何を問わず全米50州内での銃の携帯が認められている。
携帯許可は州発行の免許なので効力は基本的に発行州内に限られる。ただし、各州がそれぞれ相互認知をしていて例えばネバダ州発行の携帯免許を所有している者は他の20余州でも合法に携帯する事が出来る。同様に、相互認知している他州の携帯免許所持者はネバダ州内で合法に銃器を携帯する事が出来る。銃の携帯は基本的に、
Open carry(ホルスターあるいは生身など他人に見える状態で携帯)
Concealed Carry(衣服の下やかばんの中など他人に見えない状態での携帯)の二つに分けられるが、下記表にはOpen CarryとConcealed carryの別での情報は表示されていない。
現在、多くの州では、Open Carryは免許不要でConcealed Carryには要免許の規定が取られている州が大半であるが約半数の州は公共の場におけるOpen carryも禁止している。
なお、Open Carry、Concealed Carryいずれの場合にも、Loaded(装填済)とUnloaded(弾は銃と別に所持)との区別があり、違反した場合には一項目ずつ罪が加算される。
例えば規制の有る州で、かばんの中(あるいは衣服の下)に弾を装填済みで州に未登録の銃を所持して道を歩いていたとすると、1 Carrying Loaded firearm, 2 Carrying concealed weapon,3 Possessing unregistered firearm のそれぞれ3項目の別々の罪状で訴追される可能性がある。
カリフォルニア州では、車のグラブボックスでも同様の罪になるが、自動車内を私有地内とみなすか公共の場とみなすかは各州法でまちまちである。
また、州の携帯免許を所持していても、学校敷地内や連邦政府施設内(含む郵便局)、空港敷地内など、連邦法で携帯を禁止されている場所などでは連邦法違反になる。
多くの州では、免許の有無や携帯の方式に関わらず、飲食店(特に酒類を提供するバーやクラブなど)における携帯を禁止している州が多く、多くの店では入り口に『No Firearms』『No Guns』の表示を掲げている、もしくは施設所有者や係員に『銃器持ち込みお断り』と告げられたにも関わらず退去しない場合は、銃の携帯免許の有無に関わらず『住居侵入罪』が適用される。州の専占権
State Preemption of Local Restrictions:州政府が銃の販売数や流通量などをコントロールできるか否か。(例:Noであれば州政府はマーケットに干渉することができない)
NFA武器の規制
NFA Weapons Restriction:NFA(National Firearms Act)で括られた武器の種類(フルオートウェポン(マシンガン)やサウンドサプレッサー(サイレンサー)や肩付けのストックが付いていて銃身長がライフルでは16インチ以下SBR(ショートバレルライフル) ショットガンでは18インチ以下のSBS(ショートバレルショットガン)など軍や政府でも使用される高性能武器で、いずれも政府に登録されている)が規制されているか否か。Noであればフルオートウェポンの場合は1986年以前に登録された物は民間人の間で流通、所持が許可されていて、200ドルの税金を納める、指紋捺印等の手続きを踏めば購入可能である。それ以降のものはフェデラルファイアーアームズライセンス保有者(銃砲店等)のみが所持できる。サウンドサプレッサーは最新のものも200ドルの税金を納める、指紋捺印等の手続きを踏めば購入可能である。2018年現在は約6ヶ月程でタックススタンプが送られてくる。
Peaceable Journey法
Peaceable Journey Law:直訳すれば「平和な旅の法律」。在住地とは異なる法律を適用している州に越境して移動する際、弾丸が装填されていた場合などに違法行為となるか否か。(Noであれば本法律は適用されないため違法行為にはならない。Yesである場合は本法律が適用されている州であり、たとえ所有者が他州にて合法で所有している銃であっても装填済みの場合、違法行為となり逮捕される)
また上記のウィキペディア引用文にて説明されてない項目がふたつあるので、その説明を以下にしてします。
*Shall Certify
Shall Certifyとは、拳銃を隠し持つ(concealed carry of a handgun)免許を取得する必要があると同時に、火器所有自体が法で禁止されない限り、免許を受け取れるべきであるということ。つまり、他の州では、法執行官(警察官・保安官など)による、拳銃を隠し持つ(concealed carry of a handgun)免許を否定する選択の自由があるゆえ、あえてこのようなShall Certifyと明記してる。
**Duty to inform
Duty to informとは、法執行官(警察官・保安官など)による職務質問を受けた場合、火器類を所持してるか否かを明らかにしなければならない法。この法は、火器類を隠し持ってる場合に重要なポイントになる。
まとめ
と言った感じで、簡単にまとめられた表と一部の項目だけを訳しましたが、実際の法律内容はもっと詳しく条件なども盛り込まれてます。
また、乱射事件が起きるたびに問題視される内容は言及されてなかったり。例えば、長銃は購入する上で18歳という年齢制限あるとはいえ、弾丸・弾倉やアクセサリー(例:ラスベガス乱射事件で犯人が使用したbump stocksなど)などの所有制限や、長銃所有自体に関してははっきり書かれてないかったりしてます。一般人からしたら、購入も所有も同じにしか見えないけど、そういう微妙な違いがある意味盲点であり、犯罪者にとっては法を潜り抜けれる抜け穴なのだと思います。
オハイオ州では、過去に2件乱射事件が起こりました。2012年にChardon市の高校で起こった事件(Chardon High School shooting)と、そして近年2019年にデイトン市のバーで起こった事件(2019 Dayton shooting)です。後者の乱射事件では、今回テキサス州の小学校で起こった乱射事件をきっかけに焦点が再度当てられた、長銃AR-15が使用されました。
ちなみに、この銃の殺傷力の強さをリポートした報道番組「60ミニッツ」を最近観ました。この番組を観ると、脳の発達がまだ未熟な18歳の人間が、なぜこの銃を購入できるのか理解に苦しみますよ。
実は私、銃による被害を身近で経験したことがあります。十数年前、当時アシスタントとして働いてたスタジオの上司が隣人に銃殺されたのです。その体験談は別の記事で詳しく書きたいですが、この他にも親戚が隣人と口論になり銃殺されたり、以前住んでいた自宅に銃弾が撃ち込まれたり、息子たちの学校の近くで銃撃があり学校がロックダウンされたり。。。
とにかく、銃による被害は身近過ぎるのです。いつどこで自分が被害者になるのかわからない状況。それが今のアメリカです。
もしこの記事を読んでるあなたが米国で有権者であるのなら、今年の中間選挙に向けて今一度立ち止まって考えてもらいたい。いったい誰が銃規制強化を強く薦めてるのかと。
有権者じゃなくても、アメリカに住む者なら誰でも、身近に関わって来る問題です。自分たちができる事を、これを機会にぜひ模索してもらえたらなと願ってます。
【追記(7月9日編集・更新)】
6月13日に、DeWine知事が承認署名したことにより法案が施行され、同時に学校の職員や教師が学校内に銃を持ち込む事が許可されました。また、銃を携帯するにあたって取扱などの訓練を必要されてたのですが、従来の訓練時間700時間からたったの24時間に短縮されました。24時間とは、警官に課せられる24時間訓練時間と同じです。
参考サイト出典元
- テキサス州小学校で銃乱射事件。児童19人と大人2人が死亡 —HUFFPOST より
- POLITICO Playbook: New poll shows huge support for gun restrictions —Politico より
- Gun Safety Policies Save Lives — Everytown for Gun Safety Support Fundより
- Strictest Gun Laws by State 2022 —World Population Review より
- HOW DOES YOUR STATE COMPARE? — Giffords Law Centerより
- As mass shootings continue, Ohio is about to significantly loosen its gun-control laws — Cleveland.comより
- Gun laws in Ohio— Wikipediaより
- アメリカ合衆国の銃規制— Wikipediaより
- Gun / Firearms / Weapons Charges— criminalattorneycolumbus.comより
- Duty to Inform States 2022— World Population Reviewより
- 2017年ラスベガス・ストリップ銃乱射事件— Wikipediaより
- Chardon High School shooting— Wikipediaより
- 2019 Dayton shooting— Wikipediaより
- AR-15 style rifle— Wikipediaより
- What makes the AR-15 style rifle the weapon of choice for mass shooters?— “60 Minutes” CBSより
- Gov. Mike DeWine signs bill slashing training requirements to arm teachers in schools —Cleveland.com より